運動・スポーツ情報サイト「Citta(チッタ)」から、日本ゴルフジャーナリスト協会会員でゴルフハウス湘南代表の小森さんへ、ゴルフについて気になるアレコレを質問する企画です。今回は、「ゴルフ界で注目されている事(トレンド)」について伺っていきます。
【Citta】では早速、ゴルフハウス湘南の代表の小森さんにお話を伺っていきましょう。小森さんよろしくお願いいたします!
【小森】よろしくお願いします。
■キーワードは「お一人様」と「IT技術」
【Citta】「ゴルフ界で注目されている事」についてですが、大きく2つに分けてお聞きしたいと思います。
まずひとつは、ゴルフ初心者の方や楽しんでゴルフをされる方々の流行りという点で、どういった練習環境を選ばれているのか?また、そういったニーズに応える為にゴルフ業界にどういった流れが生まれているのか?について教えてください。
【小森】ゴルフ業界での最近の流行りは、“お一人様”だと思います。このお一人様ブームは、ゴルフに限ったことではないかも知れません。一人でキャンプを楽しむ「ソロキャン」をはじめ、一人で旅行会社のツアーに参加する「お一人様ツアー」、更に「一人カラオケ」「一人焼肉」、飲食店の「ぼっち席」などなど・・
ゴルフでは、一人でこっそりゴルフを楽しむ「隠れゴルファー」です。ゴルフを始めたことを会社の上司や先輩に内緒にし、隠れてゴルフを楽しんでいる若者のことです。ゴルフはやりたい・・けど休みの日に上司や先輩にゴルフに付き合わされるのはイヤ、がその理由です。一人で気ままに、もしくは気の合う友達同士のみでゴルフを楽しんでいるというわけですが、最近はこの「隠れゴルファー」の秘密の練習場所として急増しているのが、24時間営業のインドアゴルフ練習場です。
24時間営業ですから、夜中などはスタッフのいない無人の時間帯があります。中には24時間まったくスタッフのいない完全無人営業のところもあります。
スタッフがいないわけですから、チェックインやチェックアウトはスマホのアプリをかざして“ピッ”で済ませられるケースが殆どです。中には顔認証の所もあります。よって練習場の運営面では、顧客ごとの利用状況などのデータ収集がしやすいと思います。また無人ですから、人件費が抑えられる、人手不足を解消できるといったメリットもあります。
インドアゴルフ練習場が急増したのは、コロナの影響もあります。コロナで人と人との接触がはばかられた頃は、非接触、非対面でことが済み、感染リスクが軽減できるからです。
また、このような練習場は都心部を中心に増えていますが、それはコロナでリモートワークが増え、賃料の高い都心部にオフィスを構える必要がなくなった企業が郊外へ移転し、都心のオフィスビルに空室が増えたことも影響していると聞きます。家主は空室を埋めるため、安値でテナントを募集せざるを得なくなり、インドアゴルフ練習場が出店しやすくなったわけです。
※2022年11月に取材したインドアゴルフ練習場(撮影場所:ゴルフミラーレンジ聖蹟桜ヶ丘店)
取材記事はこちらです。
https://www.bizclip.ntt-west.co.jp/articles/bcl00032-089.html
お一人様といえば、ゴルフ場もお一人様でのラウンドを可能にしているコースがあるのをご存じですか?千葉県にあるマグレガーカントリークラブさんなど、関東だけでも探せば6~7コースぐらい見つかります。
一般的には、一人で来場したお客様同士、3~4人を同じ組でラウンドさせるケースが殆どですが、これらのコースでは完全に一人でプレーする“ソロゴルフ”が可能です。ゴルフ仲間がいなくてもラウンドでき、かつ知らない人と一緒に回って気兼ねすることもないと好評だと聞きます。
※2022年3月に取材したマグレガーCCの一人ラウンド専用カート(写真提供:マグレガーカントリークラブ)
取材記事はこちらです。
https://www.bizclip.ntt-west.co.jp/articles/bcl00032-081.html
お一人様ゴルフのもう一つの利点は“時短”です。お一人様でのプレー時間は、ハーフで約1時間10分程度、18ホールでも2時間半ぐらいで回れるため、ゴルフの後でも十分リモートワークで仕事をすることができ、時間を有効に使えます。
最近はクラブハウス内にWi-Fi環境を整備し、ワーケーションスペースとして提供しているコースもあります。ゴルフを時短で楽しみ、そのままクラブハウスでリモートワークし、仕事の後はのんびりクラブハウスのお風呂に入って疲れを癒して帰宅する。そんな“ゴルフワーケーション”も可能なのです。
ゴルフを頑張ると仕事が疎かになる、一所懸命仕事をするとゴルフをするヒマがない・・は、もう今は昔の話ですね。(笑)
ゴルフ市場で注目すべきは、IT技術の発達も見逃せません。
先述の24時間営業のインドアゴルフ練習場には弾道測定器が設置され、ボールスピード、打ち出し角、スピン量から導き出される弾道データを、グラフィックで確認することができます。
また、ハンディタイプの弾道測定器も登場し、高性能のものでも10万円以内、中には4~5万円で購入できるものもあり、これから更に普及していくと思います。
※ゴルフショップの距離測定器コーナーも充実(撮影協力:ヴィクトリアゴルフ藤沢川名店)
また、距離測定器の進化も見逃せません。かつてはコースに設置されたヤーデージ杭を頼りにするか、キャディさんに聞くしかなかった残りの距離も、今やGPSやレーザーで距離を正確に知ることができます。
その距離測定器の進化が凄いんです!単に残りの距離を教えてくれるだけでなく、ユーザーの飛距離を考慮して推奨するクラブを教えてくれたり、コースの攻略法をサポートしてくれたり、更にはラウンド中のショットを自動で記録、スマホのアプリと連動することで、過去のラウンドを分析することもできるんです。
但し競技によっては、距離測定器の持つ、距離を測定する以外の機能の使用が禁止されている競技もあるので注意が必要です。
屋外練習場でのIT技術といえば、トップトレーサーレンジです。練習場の屋上に設置されたカメラが、打席から放たれたボールを追跡。弾道を3次元的に計測しデータ化するものです。ショットごとに飛距離やボール速度、打ち出し角度や弾道の高さ、左右の曲がり幅などのデータを、打席に設置されたモニターで確認することができます。
実在する世界の有名コースをバーチャルでラウンドできる「バーチャルゴルフ」や、練習場に設置されている実際のピンを狙い、ダーツのようにポイントを競い合う「ポイントゲーム」などで楽しむことができます。
またスマホに専用アプリをダウンロードすれば、練習記録を残し、いつでもスマホで確認することができるだけでなく、オンラインで繋がっているため、他のユーザーと競い合うこともできるそうです。
トップトレーサーの登場で、ゴルフ練習場が単なるゴルフの上達のための施設から、「練習場そのものが楽しい」「練習場に行くこと自体が目的に」と進化したと思います。「今日のデートどこ行く?映画?ボウリング?それともゴルフレンジ?」という人も増えたのではないでしょうか。(笑)
※2022年6月に取材したトップトレーサーレンジ(撮影場所:梅里カントリークラブ)
取材記事はこちらです。
https://www.bizclip.ntt-west.co.jp/articles/bcl00032-084.html
■健康・ヘルスケア分野におけるゴルフの活用
【Citta】なるほど!お一人様とIT技術の進化がキーワードですね。
二つ目に、ゴルフの活用という点で、娯楽だけでないゴルフの可能性、今後の展望について教えてください。
【小森】先述のトップトレーサーレンジは、米国の「TOP GOLF」の技術を日本のゴルフ練習場向けにアレンジしたものです。「TOP GOLF」は、ゴルフ練習場というより、どちらかというとアミューズメント施設です。ゲーム感覚でゴルフの打ちっぱなしを楽しみながら、飲食を楽しむ空間です。
ボウリングやビリヤード、卓球などのスポーツをアミューズメント化したラウンドワンのゴルフ版といえばイメージしやすいでしょう。近い将来、「TOP GOLF」のような業態も、日本で登場するかも知れません。
とはいえ、「TOP GOLF」も娯楽には変わりありません。娯楽だけでない“ゴルフの可能性”となると、やはり健康、ヘルスケア分野におけるゴルフの活用です。ゴルフは正しく行えば、健康の維持増進に役立つ素晴らしいスポーツだからです。
それだけではありません。ゴルフは、自然を楽しむ鑑賞性や非日常を楽しむリフレッシュ性も兼ね備え、かつ社交性に富み、人と人とのコミュニティ形成にも役立つスポーツです。これらゴルフが持つ特性や効用を活用すれば、健康経営やウェルビーイングの実現に役立つだけでなく、医療や介護、リハビリテーションの領域まで包括し、広く社会貢献することが可能であると考えています。
しかし、それらを具体的に進めていこうとする企業はまだまだ少ないです。だから私は、(一社)日本健康ゴルフ推進機構を発足させ、「健康ゴルフ」を広めていこうとしています。先日、ある医療・ヘルスケア関連企業と共同で、それを進めるプロジェクトをスタートさせました。「メディケアゴルフ®」という名称で、商標登録も取得しました。
【Citta】ゴルフの健康効果については、これまでに多くのコラムで紹介いただいていますが、企業の健康経営は注目され取り組まれている企業も多いと思います。実際にゴルフを健康経営として取り入れる企業も増えているのでしょうか。具体的な事例もあれば教えてください。
【小森】ゴルフによる健康経営を実践する企業や、それをサポートする企業は出はじめていますが、けして増えているという状況ではありません。ゴルフによる健康経営は、大きく2つのタイプがあります。一つはコースラウンドを通じて健康増進を学び、行動変容につなげるタイプ。もう一つはスタジオや体育館、広めの会議室などでゴルフの上達と紐づけたエクササイズを実践するタイプです。
前者では、石川県にあるゴルフ場、小松CCさんが、大手建設機械メーカーの健康経営を、独自の健康増進プログラムでサポートしています。小松CCさんは、国内で唯一、ヘルスツーリズム認証※を受けるゴルフ場で、歩行診断をベースにした独自の健康増進プログラムを提供されています。
※ヘルスツーリズム認証とは、「旅と健康」という視点から、観光商品を客観的に評価する第三者認証サービスです。詳しくはこちらです。
https://htq.npo-healthtourism.or.jp/
後者では、手前みそで恐縮ですが、弊社、ゴルフハウス湘南が、ゴルフの上達と健康の維持増進を両立させる運動プログラム「ゴルフフィットネス」で、様々な人達をサポートしています。元々は弊社が運営するゴルフスクールで導入している運動プログラムですが、高校の野球部や大学のアメフト部、建材メーカーのショールーム等でも指導実績があります。
ゴルフフィットネスは、運動補助器具を使うため、トレーナーによる介助が不要です。また省スペースで場所を問わず、手軽にできますので、仕事の合間のすき間時間を利用して効果的な運動が可能です。
もちろんゴルフフィットネスは、オフィスに限らず、ゴルフ場でもゴルフ練習場でも実践可能です。ゴルフスクールや企業の健康経営のみならず、様々なシーンで活用していただきたいと思います。
【Citta】今回、「ゴルフ界で注目されている事」についてお話いただきましたが、ズバリ!小森さんが最も注目され、力を入れていきたいと考えている事を教えてください。
【小森】繰り返しになりますが、ゴルフの持つ効用を、健康・ヘルスケア、医療・介護、そしてリハビリと総合的に活用し、広く社会貢献するとともに、ゴルフの価値を高めていきたいと考えています。
昨年(2023年)の8月3日(木)、東京ビッグサイトで開催されたゴルフのパフォーマンス向上に特化した展示会「第2回 ゴルフパフォーマンスコンベンション」にて、セミナー登壇させていただきました。
タイトルはズバリ!「ゴルフと健康、医療・介護との連携で見えてくる新たな可能性」です。「ゴルフ×健康経営」、そして「メディケアゴルフ」の話で、ゴルフの可能性を広げていきたいと思い、講演させていただきました。
そのときの様子はこちらです。セミナー資料もアップしていますので、興味のある方はご覧ください。
https://ghs-school.com/report20230803/
【Citta】小森さん、ありがとうございました。
Cittaからの質問企画の第二弾は、「男子ゴルフと女子ゴルフの特徴・違いについて」です。お楽しみに!
※運動&スポーツ情報サイト「Citta」(2023年7月17公開コラム)より転載
https://citta-town.com/
コメントを残す