JGTOが選手を甘やかしたら男子ツアーの人気 凋落は止まらない

菅野徳雄の「日本のゴルフを斬る」
(日刊ゲンダイ 平成28年3月23日
JGTOが選手を甘やかしたら男子ツアーの人気 凋落は止まらない

現役時代の青木功は色紙に「勝負」と書いた。
「勝つか負けるか二つに一つ、2位以下は全部負け」と言って勝つことしか考えていなかった。

しかし今回、日本ゴルフツアー機構(JGTO)の会長に就任して、色紙に書いたのは「勝負」ではなくに「人を育む」だった。
(1)プレーヤーである前に、人として人の模範となるべし。
(2)ルールブックの第1章はエチケットから始まることも踏まえ、技量のみならずエチケット・マナーを順守する精神を徹底しゴルファーの規範となるべし。
(3)未来のプロゴルファーやゴルファーを目指す少年・少女の憧れとなるような、プレーヤーとしての振る舞いを、トーナメント会場でも会場外でも心がけるべし。

日本の男子ツアーはどうしてこんなに落ちぶれてしまったのかといえば、かつてのAONのようなに圧倒的に強いスタープレーヤーがいなくなってしまったからだといわれている。

人気を二分していた石川遼と松山英樹が米ツアーに戦いの場を移した後、国内にはファンを引き付ける選手がいなくなってしまったのは確かだ。

では今、国内で戦っている選手たちで人気を取り戻すにはどうしたらいいのかといえば、「プレーヤーである前にまともな人間でないとファンは増えない」ということにようやく気がついたというわけだ。それなのにJGIOは選手たちを甘やかしてばかりいたから、自分たちの首を絞める結果になってしまったのだ。

青木新会長が選手に要望している3項目は、ツアープレーヤーになった時点で誰もが守らなければならないことなのに、プレー中の禁煙もなかなか守らなかった。夜、街に繰り出すときは、どこかの遊び人のような格好をしてサングラスをかけたり、遠征するときの身だしなみもひどく、空港で、名のあるプレーヤーが異様な格好をしているので、一般の人たちがジロジロ見たりしていることも少なくなかった。

「ゴルフは急にはうまくならないけれど、人に見てもらって喜んでもらうためのマナーやファンサービスは心がければすぐにでも出来るはず」と、これまでも私は何度も書いてきた。

海老沢勝二前会長にインタビューをしたとき、そのことを指摘すると「そういう選手はほんの一部で、みんな頑張っている」と選手をかばっていた。JGTOのトップがそんなことを言っているからファンからそっぽを向かれてしまうのだ。

かつて、毎年のように全米オープンを取材に行っていた頃、最終日の最終組でこれから優勝を争うへール・アーウィンがティーインググラウンドに上がるまでファンのサインに応じているのを見てびっくりしたことがある。

これも全米オープンを取材に行ったときに見た光景だが、選手がクラブハウスを出て練習場に行く途中にギャラリーが通る道と交差しているところがある。そこでギャラリーはサインをもらうために選手が通るのを待っている。

それを無視して通り過ぎる選手は一人もいない。
選手はみんな立ち止まってサインに応じている。
見ていると、選手がギャラリーに話しかけながらペンを走らせている。

青木新会長は長い間、米ツアーで戦ってきたのだから、アメリカの選手がどうしてあんなにファンに尊敬され、人気があるのかよく分かっているはずだ。JGTOが選手を甘やかしたら、男子ツアーの人気はこれからも戻らない。

ABOUTこの記事をかいた人

1938年生まれ。岩手県陸前高田市出身。立教大卒。元日本ゴルフジャーナリスト協会会長。分かりやすいゴルフ技術論と辛口のゴルフ評論で知られる。「日本のゴルフを斬る」「シンプル思考で上手くなる」(共に日刊ゲンダイ)「菅野徳雄の言いたい放題」(月刊ゴルフマネージメント)を連載中。「トッププロのここを学べ」「ゴルフスウィングの決め手」「頭のいい男はゴルフが上手い」「即習ゴルフ上達塾」「誰も教えなかったゴルフ独習術」などの著書がある。