パットの距離感 感覚に頼るか、数値で裏付けるか

言葉、表現こそ違え、ゴルフゲームの中でパッティングの重要性を強調する格言は多い。

例えば1ラウンドを90で回る人は、18ホールすべて2パットとすると、合計36ストローク。つまり40%がパットになる。これを「残り60%の54ストロークはショットじゃないか」と思うか、「40%もあるのか」と思うかで、パットに対する考え、取り組みが違ってこよう。

80台へ、36回のパットをどう減らすか

ショットの54打は、いわゆる「パーオン」より1打多い「ボギーオン」が基準になる。ちなみに、昨年の国内男子ツアーのパーオン率1位は藤本佳則の71.46%だが、100位の横尾要は55.35%。つまり、ツアープロでさえパーオンできるのは10回のうち6回が精いっぱい。トーナメント設定コースと一般営業コースとでは各ホールの長さが違うので単純比較はできないが、われわれアマチュアともなると「ボギーオンが御の字」というのが現実だろう。

となると、54回のショットを少しでも少なくする練習とともに、36回のパットを1打でも減らすことが80台で回るポイントになってこよう。

そのパッティングだが、距離によるストロークの強弱、打ち分けを、みなさんはどのように実践されているだろうか……。

プロゴルファー、それもパットの名手と称される人は、感覚派が多いといわれる。コツンとたたくように打つ青木功、反対に小さいテークバックからゆっくりとフォローを大きく出すジャック・ニクラウス。どちらも、独特のスタイルである。

「でも」というのは、ある日本のベテランプロ。「プロは何千時間もパットの練習をし、試合で何千回もパットをして、感覚を研ぎ澄ませてきたから、距離感が身についている。それと同じことをアマチュアがやってもうまくいかない。もちろん、距離感を養うのも大切だけれど、「ここ一番、入れたいパット」とプレッシャーがかかるときは、感覚に頼るのではなく、パターヘッドの振り幅で対処したほうが入る確率は高くなる」

そのプロが勧めるルーティンは、次のようなものだ。

基準となる振り幅、転がりの距離記憶

これからラウンドするコースの練習グリーンに行ったらまず、傾斜のない平たんな場所を見つける。そこで、基準となる振り幅、例えばスタンスをとった左右のシューズの内側同士の幅(ボールの位置はセンターとして)でストロークし、ボールがどれくらい転がったかを歩測。何回か打ってそれが3メートルだったら、これを記憶する。

次に左右のシューズの外と外の幅で打って、今度も距離を測る。さらにシューズもう1足分外の幅でストロークし、転がる距離を測って、そのグリーンの速さをおおよそつかむ。

今度は上り傾斜、下り傾斜の場所で同じ方法で、振り幅による転がる距離を歩測して、それらの数値をインプットしてラウンドに備える。

実際のグリーンでは、まずボールからカップまでの距離をしっかりと歩測。次に、そこの傾斜を判断する。仮に4メートルのやや上り傾斜だとすると、その分を加えて、距離は約5メートル。ここで練習グリーンでの数値を思い出し、「両足の外と外でOK」の結論を出してパットに臨む。

感覚プラス数値の裏付けで、パーパットのプレッシャーを乗り越えましょう。

日経電子版2015年5月28日