下手ゴルファーには悲しき結末が予想される   甲斐 誠三

SLEルール」は本当にゴルファーのためになるのか!
高反発フェースのドライバーはクラブとして認められないというけれど・・・

クラブフェースの反発係数を0・830以内に抑えるSLEルール(スプリング効果規制)が2008年1月1日から施行される。高反発クラブはゴルフ規則によって正式なゴルフ用具として認められないというもの。しかし、現状では「ルールだからといって素直に受け入れられない」などの意見も多く、一般ゴルファーやゴルフ場も含めて賛否両論が渦巻いている。SLEルールの今後の問題点、一般のアマチュアゴルファーに与える影響などについて識者の意見を集めてみた。


 

下手ゴルファーには悲しき結末が予想される   甲斐 誠三

 

本紙編集子から一般ゴルファーへの影響というテーマを与えられた時、本協会の中で最も下手なゴルファーに回ってきたなーと感じた。ゴルフジャーナリスト人生40年余りを経てきたが、実技は全く芳しくない。とくに最近は加齢とともにドライバーは飛ばないし、アプローチ、パットのフィーリングも冴えない。現役時代は一週間続けて一日18ホールをプレーしたこともあったが、今秋、二日間36ホールをプレーしてみて、これがギリギリだと感じた。ゴルフは理論とか知識ではなく実践なのである。

私のようなゴルファーにとっては、規制なんてとんでもない。どんどん科学の発達とともにゴルフ用具の進歩は大歓迎である。ドライバーの飛距離が出ることは、スコアだけでなく、ゴルフの醍醐味に大いに関係する。飛ばなければ、クラブを握る意味がない。私は糸巻きボールとパーシモンウッドの時代からスタートしたが、ツーピースボールとメタルヘッド時代がやってきたとき、どれだけシニアゴルファーの喝采を得たことか―。ゴルフ人生を10年延長したといわれている。

とはいえ、ゴルフ場の施設は昔ながらのままである。少々バックティーを後ろに増設しても知れている。というほど用具は進歩し、相対的にゴルフ場は短くなった。となると、用具の歯止めしかない。プロやトップアマにとって、制限は必要であり、ルールによる規制と用具の発展のイタチごっこは今後も続くだろう。というわけで規制を否定するものではない。

プロ、トップアマについては規制されるが、公式戦以外は、今のままでよいと思っていたら08年からはすべての競技に適用となった。とはいえ、私は現在も持っている二本の規制外ドライバーを死守しよう思っている。しかも恥を忍んで、ゴールドマークから打つつもりだ。若い人たちと戦うには、これしかない。また、ささやかな年金暮らしの私にとって買い替えは避けたい。ゴルフへの意欲を失わぬためにも、規制外ドライバーに固執せざるを得ない。

こうして私の08年のゴルフは始まっていくと思われる。いままでの用具の移り変わりは、飛距離が増し、スピンが効いて、スコアアップにつながる方向だった。しかし、昨今の規制は、下手ゴルファーにとって、とくに非力な人、婦人、高齢者などにとって致命的なマイナス要素をもっている。こうした人々は反抗せざるを得ない。

問題はこれからである。日本人ゴルファーはこうした規制にいつまで反抗できるか―ということだ。大手メーカーは規制遵守の用具しか作らない。規制外を特注すれば高くつく。ちょっとしたコンペもしばらくは規制を緩めるだろうが、やがて不公平だとかという声が出て、出来るだけ公認クラブということになり、適応クラブを使っていないと後ろめたくなる。やがては公認のみとなる。仲間内のコンペでも、いつまでそんなクラブを使っているのか―と白い目で見られるようになる。私も無理して適合クラブを買うことだろう。愛用のクラブを磨きながら、その日がくるのを覚悟している。

時あたかもアナログテレビから地上デジタルへの切り替え時代。テレビにはチューナーをつければいいのだが、クラブにはこのような手段はないらしい。高反発以前の古いクラブを持ち出すのは寂しい話だ。何? メーカーが適合クラブで飛距離も十分というのを開発するって。日本の技術はすばらしい。だが、ルール改正の意義はどこへ行くのだろう。