低迷ゴルフ界に一石を投じる柔軟発想 ~高梨 保~

日本のゴルフ界に変革の風穴を! JGJAパネルディスカッションを開催

バブル経済が崩壊した1990年代の初頭から始まったゴルフ業界の低迷は、今もって顕著な回復の兆しは見えない。そこで、日本ゴルフジャーナリスト協会は、この状況を打破するきっかけとなるべく、「日本のゴルフ界に変革の風穴を」と題したJGJAパネルディスカッションを7月3日(火)、銀座ブロッサム中央会館にて開催した。


 

低迷ゴルフ界に一石を投じる柔軟発想 高梨 保

ゴルフ界の苦境脱出が討論のテーマだっただけに、暗い集まりになるんだろうなと予想していたのだが、それは杞(き)憂だった。理由はパネリストの皆さんがいずれもゴルフの将来を本気で考え、その提言がゴルフ界発展へ非常に示唆に富んだものだったからである。

討論の具体的な内容については会報の詳述を読んで頂くとして、その中で特に私が関心を持ったのは、太平洋クラブが始めたという「マスターズ会員制度」だった。

これは、65歳以上になった同クラブの会員は名義書き換え料無料で会員権を配偶者や子息に譲ることができるというもの。そして譲った本人も会員としてのプレー権を保証される。

似たような制度は首都圏はじめ他のゴルフクラブでも実施するところが出始めているが、この効果はゴルファーの若齢化、女性ゴルファーの増加等の観点から非常に大きいと思われる。バカ高い名義書き換え料に経営を依存している旧態依然のゴルフ場には到底マネできるものではなかろうが、ゴルフ界の長期的繁栄を願うならぜひ他コースも見習ってほしいと思う。

ゴルファーの底辺拡大の意味でもう一つ興味を抱かせられたのは、朝日コーポレーションでおやりになっているという「ピクニックゴルフ」。ゴルフを全く知らない人にゴルフの楽しさを――と、4人に従業員1人をつけてカートで送り出し、コース内で遊んでもらうという。最初はグリーンでパッティング遊びでもいいし、次はアプローチをしたり、ティーグラウンドから打ったり、うまく当たらなかったら手でボールを投げてもいい。それこそピクニック気分で遊んでもらうのだという。

それで料金は9ホール食事付きで3000円! 運営のご苦労がしのばれるが、「それがきっかけで一人でも多くの人がゴルフって楽しそうだなと思ってくれるなら」というのが同社・手塚社長の思いである。

何とも柔軟で素晴らしい着想。他にも「一日ゴルフから半日で楽しめるゴルフへの脱皮」「ゴルファーの技術向上のために練習場とゴルフ場の提携」「多数コースが提携して相互利用を認める制度」など、魅力的なさまざまな提言があった。それらは手塚社長の言葉にもあった「自分のコースさえ良ければいいという考えではゴルフ界の将来はない」という強い思いがあるからこその着想なのだろう。

その意味で、今回のパネリスト諸氏の提言はゴルフ界に一石を投じることになるだろうし、会は大成功だったと思う。ただ一つ残念だったのは、各パネリストからプレー料金についてひと言の言及もなかったこと。ゴルフの大衆化という視点から見るなら、ゴルフに関わる料金はまだまだ高すぎる。ゴルフ普及の根幹に関わる問題だけに、今後はその点についても突っ込んだ論議を期待したいと思う。