日本のゴルフ界に変革の風穴を! JGJAパネルディスカッションを開催

バブル経済が崩壊した1990年代の初頭から始まったゴルフ業界の低迷は、今もって顕著な回復の兆しは見えない。そこで、日本ゴルフジャーナリスト協会は、この状況を打破するきっかけとなるべく、「日本のゴルフ界に変革の風穴を」と題したJGJAパネルディスカッションを7月3日(火)、銀座ブロッサム中央会館にて開催した。

パネラーとして、株式会社アコーディア・ゴルフ代表取締役社長 竹生道巨氏、株式会社朝日コーポレーション代表取締役社長 手塚寛氏、株式会社太平洋クラブ代表取締役社長 治郎丸清志氏、株式会社チャーミング・リゾーツ代表取締役社長 坂本正浩氏の4氏を招聘。司会進行役はJGJA副会長の片山哲郎氏が務めた。ゴルフ場運営会社は、この状況を打破するため、どのように取り組み、どのような工夫を凝らしているのか、パネラー各氏に語って頂いた。

―まず皆様の会社の歩みや現在の状況、マーケットの位置づけなどから伺います。竹生さんからお願いします。

竹生道巨氏(以下、竹生) 私どもの会社は2003年にスタートし、現在は全国に124コースを保有、運営しております。スタートした時点で重視したのはお客様の利便性を考えたサービス業としてのゴルフ。「It’s a new game」をテーマに、新しいゴルフの楽しみ方を提唱しております。3年目の2005年からは第2ステップとして会員重視のサービスに重点を置いています。会員様になっていただいて安く楽しくゴルフをしていただける形をどうやって作っていけるか、というのが第2段階です

―ゴルファーは団塊世代よりも上がコア層になると思いますが、会員の平均年齢はどれくらいですか?

竹生 会員様の平均年齢は60歳を少し切るくらいです。例えば去年から始めたのですが、会員様で70歳以上の方は年間を通して、安全を確保してのカートのフェアウェイ乗り入れを実施しました。

(株)アコーディア・ゴルフ
代表取締役社長      竹生 道巨

リビエラCCやターンベリーGCなど、海外の名門コースで責任者を務めていた実績を持つ。2003年より(株)アコーディア・ゴルフの最高経営責任者、2005年に同社代表取締役社長に就任し現在に至る。

 

―次に朝日コーポレーションの手塚さんお願いします。

手塚寛氏(以下、手塚) 設立は2001年9月になりますが、もとは朝日観光グループで、国内で10ヵ所のゴルフ場を経営していました。バブル崩壊直後、10ヵ所で110億円の売り上げがあり、20億円くらいの利益を出していたと思います。今は会社が分かれてしまいましたので、推定の数字ですが、売り上げが40億円に減り、利益が5億円に減りました。ゴルフ場は10年も経ちますと設備投資が毎年2000万円以上もかかります。安定した利益を出していかないと設備投資に対応できないのです。しかし、我々の会社は「ゴルフ場経営は利益企業」という父親の代からの体質があったので、バブル崩壊後も生き残れたと思っています。私どもの基本的な考え方はゴルフの大衆化、そしてゴルフ場経営は事業だということ。より良いものをより安く提供して一人でも多くの方にゴルフをしていただくということ。今、取り組んでいるのはゴルフを通して人々の心と体の健康づくりです。健康産業の一つとして、医療費が高騰している中で、ゴルフによって予防していく。あるいはコミュニケーションをとることで友人関係を良くしていく。そういうことを今、提言しています。私どもが目指すゴルフ場は「NOTトーナメントコース」で、「NOT閉鎖的な名門倶楽部」です。常に笑い声がクラブハウス内に絶えない雰囲気作りということで、コミュニティ型の人が集まりやすい倶楽部を目指しております。


(株)朝日コーポレーション
代表取締役社長      手塚 寛

(株)朝日コーポレーションの経営者であるだけでなく、日本ゴルフ場事業協会の副理事長、ゴルフ市場活性化委員会の副委員長も務める。練習場業界、用品業界とも交流を持ち、ゴルフ業界で幅広く活躍している。

 

―次に太平洋クラブの治郎丸さんお願いします。

治郎丸清志氏(以下、治郎丸) 創業して36年目になりますが、現在は二つの会員制クラブを運営しています。一つは太平洋クラブ、もう一つは太平洋アソシエイツです。クラブコンセプトはワンランク上の風格ある、それでいてゴルフを愛する人にはオープンに、という倶楽部を目指しています。6年前の時点で太平洋クラブの会員数は1万5000名で平均年齢は60歳でした。このまま推移をすれば、今年は平均年齢が65歳となりますが、6年前から若返りをはかり、太平洋アソシエイツを創設しました。車一台で購入できる330万円で募集。この新しい会員4000名の平均年齢は46歳。うち4分の1は30代です。若返りを図ると同時にマナー、エチケットキャンペーンを昨年の春から推進しております。マナーブックを全会員に配布しましたが、これはゴルフ場のイメージアップ、ゴルフのイメージアップということで非常に良かったと思います。


(株)太平洋クラブ
代表取締役社長     治郎丸 清志

(株)太平洋クラブは「三井住友VISA太平洋マスターズ」や、2001年のワールドカップを系列の「御殿場コース」で開催。ゴルフ文化の担い手としても存在感を発揮し、エチケットやマナーの普及にも力を注ぐ。

 

―ありがとうございます。チャーミング・リゾーツの坂本さんお願いします。

坂本正浩氏(以下、坂本) 2005年6月の設立ですが、実は2003年の7月に栃木県のゴルフ場の取得からゴルフ場事業に参入しました。現在は関東圏で5つのゴルフ場を経営、運営しております。会員数は約1万2000名弱です。私どもの親会社は不動産業をやっておりまして、グループのなかで様々な運営事業を展開しております。その中でライフスタイルの提案をミッションにしております。特にシニア層に向けたセカンドライフの提案、それを応援する企業として運営事業に携わっています。事業のメインは①遊ぶ、②健康、③医療、④介護、⑤住まいの5つです。ゴルフ場は遊び、健康を担います。そもそもゴルフ場にはゴルフを楽しむためにお越しいただくということで、まずはメンバー様にゴルフ場のサービス面やクオリティ面の意見を聞き、最大限の対応をしております。「今、メンバー様が一番望まれていることは何か」を重視して、運営しております。それとメンバー様のご家族やご友人など、ゴルフに関わっていない方々にもファンになっていただくことで、ゴルフを始めるきっかけを作っていただこうと思っています。


(株)チャーミング・リゾーツ
代表取締役社長       坂本 正浩

(株)チャーミング・リゾーツは2005年6月に設立された会社で、国内5コースを運営。シニア向け住宅とゴルフ場、また、健康をキーワードに様々な新しい試みに挑戦している。

 

―ありがとうございます。ではゴルフ界はなぜ低迷期を迎えてしまったのか。今なお低迷は続いておりますが、これを打開する突破口はあるのでしょうか。

手塚 ゴルフ界の低迷は、会社単位ではなく業界全体の危機として認識しております。しかし各社、各ゴルフ場は自分のことで精一杯で、業界全体の危機に対して何も対処してこなかったと言えます。その中でも色々な要因がありますが、私が一番感じているのは法人需要がバブルの崩壊と共に、激減してしまったことが大きいと思います。バブルの崩壊で単純にゴルフは悪いイメージだけが残ってしまいました。私たちが社会人になった頃は、会社の先輩から教わってゴルフをやりました。ところが今は社用ゴルフも減って、教えてくれる先輩もいなければ、会社側もアフター5や休日まで干渉しなくなった。30年前に比べて、ゴルフを始めるきっかけが少なくなったのが一番大きいと思います。二番目は趣味の多様化です。選択権はあくまでも一人ひとりが持っていますので、会社に強制されることもありません。それから3番目としては、今、各ゴルフ場が負担している各団体への諸会費の合計金額が大体100万から200万円です。諸会費という名目で色々な会費を払っていますが、仮に2000の倶楽部がその会費を払うと、20億円が集まります。この資金がトップアマの団体の運営にだけ回っていることに誰も提言できないでいます。これらの問題に業界として取り組んでいかなければなりません。

―治郎丸さんお願いします。

治郎丸 レジャーの多様化やヒーローの不在など、要因はいろいろありますが、私はゴルフ業界の構造的な要因を見ておかなければいけないと思います。日本のゴルフ業界の構造はアメリカと比べると非常に特殊です。アメリカのゴルフ場は、自治体が運営している公営のパブリックコースが9割を超えて、残りの1割が会員制倶楽部です。要するにピラミッド型になっているわけです。そのなかで、裾野の広いパブリックコースは住宅地と隣接し、2000~3000円でプレーできます。日本のゴルフ業界の構造は逆ピラミッドです。メンバーコースが9割、パブリックコースが1割です。固定資産税も高く、非常にコストの高い構造といえます。したがって、ゴルフ場開場に100億、200億円かけて、預託金も集めて、ゴルフ場を造らざるを得ない。こういう構造的な要因があります。現在、国内には2400コースあります。バブルが崩壊する10年前、平成4年で2000コースでした。私はゴルフ場が2400コースというのは基本的に多いと思います。こういう構造を再編成して、会員制からパブリックへ、第一段階の構造改革としては逆ピラミッド型からピラミッド型へ、裾野を広げるようにしていくべきだと思います。

―坂本さんお願いします。

坂本 ゴルフ産業が変わってきた中で、感じていることが2点あります。ひとつはゴルフ場が様々な角度から見られるようになってきたということ。だからこそ我々はゴルフ事業に参入したという言い方もできます。以前のゴルフ産業の構造だったら、我々が参入することはなかったと思います。もう1点は10年前から4割ぐらいマーケットが縮小しているということですが、我々から見ると決してそんなことはありません。ゴルフは非常に魅力的なマーケットです。

―わかりました。詳細はまた後で伺います。それでは竹生さんお願いします。

竹生 日本にゴルフが入ってきて2000年で100年になります。最初の70年間はゴルフ場の数も少なかったのですが、ある意味でのクラブライフがあって、ゴルフ場にお父さんがいて、そこに子供たちもいるという時代でした。次の30年間は、トーナメントが振興してきて、トーナメントプロも出てきた。あとは日本特有のゴルフの会員権システムが実施されてきた。ゴルフ場運営の最大の目的は会員権相場を維持すること、そして新しく開発して会員権を売っていくことでした。そういう過程で一番忘れ去られてきていたのがサービスです。バブル期には接待ゴルフも含めて、ある程度サービスが低下していても、ステータスの高いゴルフ場にお金を払って行く方が多くいました。それがやがてバブルの崩壊に伴ってゴルファーの足がゴルフ場から遠のいたわけですが、団塊世代を中心にゴルフをしたい方はたくさんいます。しかし、頻度と料金の問題がかなりありました。プレー料金がある程度リーズナブルになってくれば、プレーの頻度も上がってきます。そういった意味で、低迷期と言える部分もあるし、そうではない部分もあると思います。現実にはゴルフというスポーツをより良く改革しながら、どのようにしていくかは、色々なところにチャンスがあると思います。

―ありがとうございます。様々な意見が出ました。その中で突破口を開くための着眼点についてお話しを伺います。治郎丸さんからお願いします。

治郎丸 先ほど申し上げたように、本来の健全なゴルフをバブル期によって、失いかけています。これを立て直すには、かなりの時間がかかります。ゴルフはスポーツとしては、より優れた価値のあるものだと思います。それを正当に評価されれば、ゴルフ産業はまだまだ発展していくと確信しております。他のスポーツに無い点は、シニアになっても現役でプレーできるスポーツということ。60歳を過ぎても一定の技術を維持できて、レッスンを受けることで上達もできます。さらに老若男女問わず、夫婦や親子で一緒に楽しめるスポーツです。それから日常を離れて、親子や友人とゆっくりと語って、自然と触れ合いストレスを解消できるスポーツです。スポーツを通じて、マナーやエチケットを学べ、人格形成にも最適です。30歳の人がこの先30年、40年をゴルフと一緒に楽しい生活を送ってもらい、友人たちと楽しんで欲しいのです。その時に会員権があればそれが出来るのです。太平洋クラブには2万人の会員がおり、様々な価値観を持った多くの人が集まっています。そして、それぞれ独自のゴルフライフを満喫してもらえるように、我々はそういう機会を提供していきたいと思います。夏になれば、軽井沢で家族と一緒にリゾートライフを楽しめます。ハロウィンパーティーやクリスマスパーティーも色々なコースで開催しております。あるいは女性向け、シニア向けの各種イベントも行っています。色々な形でそういったイベントを開催しています。

―ありがとうございます。坂本さんお願いします。

坂本 私どもは3つのキーワードに注目しています。まず一つは「機能」。次は「魅力あるマーケット」。最後に「コミュニティ」というキーワードです。私どもはゴルフ場で遊びや健康をメインに掲げております。このミッションを果たすためにゴルフ場の機能は非常に役立ちます。ゴルフをすることは健康に良い。要は友人や会社の上司など、いろいろな関係の人達とコミュニケーションをはかる、または遊ぶ機能として非常に効果的なものだと思います。それと私が一番ゴルフ場で素晴らしいと思っていることは、コミュニケーションをはかる場として最適であるということです。友人や家族などのコミュニティを形成できます。それと色々な肩書きをはずしてゴルフライフを通してコミュニティを形成する。人間関係をつくるうえでも有効な手段です。そういうところに着眼しながら、私どもはビジネスモデルを形成しています。
―続きまして竹生さんお願いします。

竹生 今の時代はシニア層、若年層に着眼点があると思いますが、我々にとっては特に女性と若年層をターゲットにしています。40歳以降の人が本当に楽しめるスポーツはゴルフだけではないかと思っておりますので、40歳までに少しだけゴルフにはまっていただくこと。それとゴルフの唯一の欠点としては、プレーが面白いと思うまでに時間がかかること。この2つを、どうやって解決していくかと考えると、一つはプロによるレッスンかもしれませんし、若いうちにゴルフにはまっていただく方法をどうやって作っていくかが課題だと思います。そういう方向に持っていくためにどういう策をうっていくかが、業界全体のこれからの課題だと思います。

―ありがとうございます。手塚さんお願いします。

手塚 私は着眼点としましては、ゴルフが嫌いな人、ゴルフをやらない人の声が大事だと思います。ゴルフが嫌いな人やゴルフをやらない人の声を集めるのは大変なことですが、〝なぜゴルファーが減ってしまったのか〟を業界全体で聞く方向へ向いたほうが突破口を開く糸口になると思います。なかなか言ってはいけない本音がゴルファーにはありますが、私はゴルファーの声を集めてきました。例えば、「楽しくラウンドしたいし、スコアが良いほど嬉しい」、「上手くはなりたいが、練習は好きではない」、「少しの緊張は好きですが、過度の緊張は嫌です」でした。あとトーナメントコースや名門コースは一生に一回は回りたいコースだけど、普段もやりたいコースではないという声もありました。普段は楽しいゴルフをやりたいという声もありました。エチケットやマナーが厳しいから、ゴルフは本音でものを言えない部分がありますが、本当はそこに面白い意見があるのではないかと思います。一つ例を挙げると、私どもはレディースティをやめました。名称はフロントティにして色を黄緑色に統一しました。なぜ、やめたかと言うとシニアティを作ってくれ、と会員様から要望がありまして。ただティグラウンドが大きく何面もある訳ではないので、レディースティの1メートル後ろにゴールドかシルバーのティを置くわけです。1メートル違うだけで、なぜ、それを置かなければいけないかと言うと、本音は「赤いところから打てるか」ということです。そこで、ティの名前と色を変えて、「シニアとレディースはフロントティをご利用ください」と案内をすると誰も文句は言わずに同じティから打っています。このように常識的な部分を疑っていくことや、ゴルフに良いところはたくさんありますので、それをリードしていくのが突破口を開く着眼点だと思います。

―ありがとうございます。今、みなさんのご意見を伺いましたが、では、具体的にゴルフ人口を拡大するために、どのようなことに取り組んでいったらよいかを伺います。坂本さんお願いします。

坂本 ゴルフ場のコミュニティに注目しております。ゴルフをされるコミュニティを例えばお父さんとすると、ゴルフをしないお母さんや子供たちといったコミュニティも必ずあります。ゴルフをやらない方々にゴルフ以外のサービスをいかに提供できるかだと思います。例えば、ゴルフ場で旦那様のプレーを待っている奥様方を対象に、料理教室やフラワーアレンジメント教室など、ゴルフをされない方々のコミュニティを我々は積極的に提案しています。そういった中で、所属プロのレッスンを受けて段々ゴルフに興味を持っていただく。すると、今度は旦那様方をそっちのけにして、奥様方でゴルフを楽しんでいるケースもあります。そういった形で色々なコミュニティを通して点と点を線で繋げていく。私どもは冒頭に申し上げたようにゴルフ以外にホテル事業やシニア事業などの様々な運営事業をやっております。遊び、健康、医療、介護、住まいなどを掛け合わせて一つに整理し、ゴルフを切り口にしてファンになっていただきゴルフを楽しんでもらう方策に取り組んでいます。ゴルフ場で楽しんでもらうことを切り口にライフスタイルを提案させていただいています。

―竹生さんお願いします。

竹生 私どもは練習場と提携した会員サービスに取り組んでいます。というのも、最初は誰でも練習場でかなりボールを打って練習して、ある程度自信を持ってからコースに出ます。ところが実際は100ヤード以内で行ったり来たりしてしまい、後ろから追われたりするので、特に女性はそれでゴルフが嫌になってやめてしまうことが多々あります。そこで私どもが薦めたいのはビギナーでも練習場ではなく、最初からゴルフ場でパッティングやアプローチからレッスンを受けることです。最初の6レッスンか7レッスンのうちの2レッスンくらいをコースでやって、残りを練習場でやるという方法。まずコースへ行って「ゴルフ場ってこんなに良いところなんだ」と、ゴルフの面白さやコースの綺麗さを知っていただくわけです。そのためには練習場さんと提携し、一緒にスクールをやっていくことが必要不可欠だと思います。もう一つは40歳以下の方々が中心だと思いますが、ゴルフというものを一日のスポーツから半日のスポーツにかなりのパーセンテージで移していきたいと思っています。早朝・薄暮プレーをスタートさせておりますが、夏場は都心部を中心に早朝プレーの枠から先にいっぱいになる傾向が顕著にあらわれています。ですから私としては2点。練習場と組んだビギナーへのスクール。それから半日のスポーツへの転換。この2つが大きなキーワードです。

―わかりました。では手塚さんお願いします。

手塚 私はゴルフ市場活性化委員会で副委員長を務めておりますが、委員会では「始めよう、続けよう、もっとゴルフを」というテーマでさまざまな活動に取り組んでいます。そのテーマを具現化するために、私どものゴルフ場で取り組んでいるのが「ピクニックゴルフ」です。まだ一度もコースに出たことのない方や、クラブを握ったこともない方が対象で、9ホール、食事付き3000円でやっています。特に地元の主婦を中心に、社員が1名付いてゴルフというよりはピクニック気分で9ホールを楽しく回っていただきます。カートに乗って、いきなりグリーンに行ってパッティングから始め、カップに入るまで続けます。次のホールではアプローチからやったりして、コミュニケーションをとりながら景色を楽しんでいただき、5ホール目くらいからはティーグラウンドから打ってもらいます。9ホール目くらいになるとどうにか回れるようになります。これを今、各ゴルフ場でかなり力を入れてやっています。ピクニックゴルフの参加者数は2006年度で750名、その前の年は240名くらいの数字でした。また、ゴルフ場でも学校の部活動と同じように、クラブ内サークルという名目で色々なサークル活動を展開しております。例えば「何月生まれの人は集まろう」というふうにコンペをやります。誕生日会をしていると、次は「4月生まれと5月生まれの対抗戦をやろう」という発想も生まれてきます。また同じ高校の人を募集して、人数が集まってくると最初はOB戦が開催でき、色々な高校が集まれば、出身校別の団体戦をやったりもしています。あと、ツアー会という会を作りまして、一年に一回、2泊3日で必ずゴルフツアーをやっています。私どもの系列ではないところへ行くわけですから、うちの支配人も含めて30人くらいで、「みんなで浮気をしに行こう」と色々なコースを見て回っています。社員と会員様の交流の場にもなります。あとは初心者の方には「ひよこクラブ」や「たまごクラブ」というサークルも作っています。そういう形で、地元を意識していろいろなことをやっています。一番大切なのは回るときに迷惑をかけないことです。だから私たちのコースを卒業して、太平洋さんや他のコースへ行っても良いと私は思っています。どこもがトーナメントコースである必要はないしですし。和気藹々と楽しみたいのであれば、是非うちにご来場ください。

―わかりました。では、治郎丸さんお願いします。

治郎丸 シニアの会員様の退出を引き止めることが重要なポイントになっています。4年前から65歳以上の会員様を対象に「マスターズ会員制度」を実施しています。65歳以上の方は生涯会員として楽しめます。この4年間で500名の方がマスターズ会員になりました。その方々が退出しないと同時に、お子様やジュニアが「親父の会員権でゴルフを始めようか」と、そういう形になります。今後は65歳から60歳に引き下げることを検討しています。それからもう一つはシニアや団塊の世代がゴルフをやりたくても、なかなか人数が集まらない。知らない人と同組になるのは勘弁してくれということで、こういうゴルファーのために予約受け入れをするシステムを作ろうと。ゴルフ場が一定の期日にシニアゴルファーが一人でも予約ができるようにする。組み合わせは会員様にご希望を聞くという形で、これからの団塊世代の対策として春からスタートしていますが、なかなかの伸び率です。

―最近の話題としまして、東急不動産との業務提携がありますね。

治郎丸 そうですね。ゴルフ場の他にリゾートホテルやスキー場があり、当然、それぞれの施設に会員様がいます。どこでも優待料金で招待しようということでスタートしました。双方の会員様が5万人くらいいます。会員様やゲストの利用する回数が増えると同時に、こういう機会を提供することによって、プレー頻度を増やしていただこうと思っています。集客の面で相乗効果が期待できます。

―最後に5年後のゴルフ市場を展望するということで、今年は2007年問題で色々なことを言われていますが、ゴルフ界は2015問題ではないかと。今後の5年間について竹生さんからお願いします。

竹生 2015年と言われていますが、私はもう少し団塊世代が伸びるのではないかという気がしています。2018~2020年がキーワードになると思います。団塊世代の8割方が平日にシフトすると思います。逆にこれから5年間は、週末の空いた時間にどうやって新しいお客さんを取り込められるかが一つのキーワードです。先ほども言ったように女性と40歳以下を、どうやって獲得していくかに尽きると思います。国内において、ゴルフはゴルフ場、練習は練習場、ショップは量販店という時代から、新しい会員価値をどうやって作っていくか。練習場との提携だけではなく、総合的なゴルフサービスができる体制を作っていくことが大切です。従来の概念に囚われずに、やり方さえ間違わなければ、そう悲観することはないと思っています。

―わかりました。手塚さんお願いします。

手塚 今のまま何もやらなかったら最悪の結果を招くと思います。今、ゴルフ会員権がゴルフ場の数より、さらに供給過多になりつつあると思います。分割とか民事再生を終えたところがまた募集を始めているとか。結局、なぜ低迷するかというと民事再生ができたおかげで、ゴルフ場の場合は数が減らなかったのです。そういう中で、皆で市場を大きくしましょうと、そこから競争をし合えばいいんじゃないですか。自分のところだけが上手くいけばいいという考えでは上手くいかないと思います。日本が病んでいるのは健康の問題であったり、コミュニケーション不足であったり、いろいろな社会問題があるわけですから、ゴルフがそういうところに効くんだよ、とアピールしていく。自分のためだけに市場を大きくするのではダメ。みんなで業界を大きくして、そのあとに皆で分け合えば良いのではないかと思っています。ゴルフ業界には色々な組織があって、お山の大将がたくさんいます。例えば支配人会でも、都道府県によってはJGAの下の競技団体の色が強い支配人会までは経営色が強く、全然まとまりがない。どの団体がどうではなく、一回全部壊しちゃって再編成したほうがいいのではないかと思っています。

―次に治郎丸さんお願いします。

治郎丸 私も竹生さんがおっしゃったように、今後5年間はそれほど心配しておりません。団塊の世代が平日にシフトして、週末は現役の方々のプレー頻度を上げるということです。それと女性の比率は着実に上がっております。太平洋クラブはここ4年間で女性の比率は15パーセントから17・4パーセントに上がっています。ここ4年間で増えた利用者数のうち50パーセントが女性という感じです。これから、まだまだ女性の比率は上がっていくと思いますので、女性の受け入れ態勢を整備していきます。それから、この先のことを検討すれば、女性も含めて、一度ゴルフをしたことがある40代、50代のゴルファーをいかに掘り起こすかが課題だと思います。

―わかりました。それでは最後に坂本さんお願いします。

坂本 私どもも、ゴルフ場にいかに付加価値をつけるかということ。先ほど竹生社長がおっしゃったように、そこにゴルフ市場を活性化させる答えがあるのではないかと思います。全体的にゴルフ場に様々な付加価値がついてくると思うので、ユーザーさんからすれば選択肢が増えてくると思います。この業界全体に選択肢が増えてくれば底辺の拡大に繋がると思います。私達の付加価値とは何かといいますと、ゴルフが単一のマーケットではなく、そこにつながる要素をゴルフ場に取り入れて、今までゴルフに興味が無かった人を参入させていく形を目指します。それを付加価値として備えていきたいです。もっと言うと我々のビジネスモデルは20年くらいのスパンで事業展開していくことを考えています。やはりゴルフ場のマーケットは人数が減っていく傾向があるのかもしれませんが、要はゴルフ場を利用する延べ人数はそこまで悲観して落ちていくことはないと思います。

パネルディスカッション参加者の声


会場には業界関係者約100名にお集まりいただいた

76ゴルフ場運営会社4社の代表者から現在のゴルフ市場に対する様々な意見と提案が出された今回のJGJAパネルディスカッション。会場には業界の関係者約100名にお集まりいただいた。パネラーの話を真剣な眼差しで聞いていた参加者は何を感じたのか? 日本ゴルフ場事業協会の國分勝弥氏、鎌倉パブリックゴルフ場の安部江美子氏、さらに当協会の会員3名にこの催しを振り返ってもらった。

「ゴルフは健康にも良い」を業界全体でアピールするべき

(社)日本ゴルフ場事業協会 國分 勝弥氏

アコーディア・ゴルフ竹生氏の早朝・薄暮プレーを利用した「一日のスポーツから半日のスポーツへ変えていく」という提案や朝日コーポレーション手塚氏の主婦をターゲートにした「ピクニックゴルフ」への取り組みなど、パネラーそれぞれから特徴のあるお話を聞くことができました。ゴルフ人口の拡大が急務とされている現在、特に竹生氏、手塚氏のアイディアは女性を中心に、ゴルフを始めるきっかけになると思います。

一方で、忘れてはならないのが団塊世代の存在です。「ゴルフは健康にも良い」というお話をされていましたが、団塊世代をゴルフ場へ誘致するためには、この点を業界全体でPRしていく必要があります。

最後に今回のJGJAパネルディスカッションは大変有意義なイベントでした。次回はJGJA会員から見た「ゴルフ産業のあり方」をテーマにした座談会を開催していただければありがたいです。

ゴルフを気軽に楽しめる環境作りが大切

鎌倉パブリックゴルフ場 阿部 江美子氏

ゴルフは素晴らしいスポーツですが、現状は限られた人たちだけで楽しんでいます。まずは誰もが気軽にゴルフを始められて、かつ継続してプレーしていただける環境作りが大切だと今回のJGJAパネルディスカッションに参加して、改めて感じました。
弊社はプレー料金の値下げに努力していますが、ゴルフ業界全体が協力し合えば、お客様にもっと安くゴルフを楽しんでいただけるはずです。例えば一つの提案として「ゴルフ利用税の撤廃」「ゴルフ場固定資産税の見直し」が挙げられます。今後は行政の協力を得て、これらを実現していきたいと思います。

また、朝日コーポレーションの手塚氏がおっしゃる通り、ゴルフは健康産業の代表的なスポーツです。ゴルフを通して、心身ともに健康的な方が増えれば、様々な社会問題を抱えている日本を救えるかもしれません。

今回、4社の代表者の意見を伺い色々と勉強になりました。今後もこのような機会があれば是非、参加したいです。