"カリスマ・プレーヤー"の出現に期待  ~大山 郁夫~

私が最近ゴルフ業界に関して懸念を抱いているのは、特に男子トーナメントの在り方です。TVでのゴルフ中継も少なくなったし、新聞の扱いも小さくなったように感じているのは私だけでしょうか?

試合数も減っているのもあるでしょうが、かつては、と過去形にすること自体寂しい気がしますが、週末ともなれば、午後は男女、シニアとゴルフ番組が目白押し状態で、ゴルフや練習に行かない時などは、TVにかじり付き状態でした。今思えばそれだけゴルフトーナメントが面白かったのかも知れません。

しかし現在はトーナメントが開催されているにもかかわらず、土曜日にゴルフ中継がない時もあります。このことについて、あるテレビ局の人いわく「最近あまり視聴率がとれないので、他の番組に差し替えられる」とこぼしていました。現にギャラリーの数も激減しているようです。

この原因はどこにあるのでしょう? ゴルファーが減った? そんなことはありません。用品用具はその受け皿的存在の中古ゴルフショップの登場で、このところ着実に業績を伸ばしているデータからも、むしろゴファーの数は増えているようです。

では何故? すでに先輩諸氏もお気づきの通り、〝スター選手〟の不在です。TV全盛時代は、O・A・Nがしのぎを削り、それに続く倉本、羽川、湯原やジョーやジェットの存在、そして第3世代の丸山、田中達の活躍など、週代わりでゴルフファンを引き つけるスター選手の存在がトーナメントを大きく盛り上げていました。当然のごとくトーナメント会場には多くのギャラリーが詰めかけていました。

では現在のプレーヤーのレベルが低下しているのか、というとそうではありません。用品用具の進歩にもよりますが、TV全盛時代よりむしろ各プレーヤーのレベルはかなり向上していると思います。

モータースポーツの最高峰、F1の世界にもかつて同じような現象がありました。いまは亡きアイルトン・セナの存在です。ホンダエンジン+セナの活躍で我が国のみならず世界中でF1人気がヒートアップした時代がありました。しかし彼の事故死とホンダの撤退で我が国のF1人気が低迷した後、ホンダの再挑戦と佐藤琢磨という世界一になれるスター選手の登場で、現在は人気が確実に復活しているといいます。

これまで盛り上がりに欠けていた女子ゴルフ界は〝アイちゃん効果〟でむしろ現在は男子よりも注目されていることは誠にうれしい反面、手放しでは喜べない心境です。

男子ゴルフ界に一日でも早く〝ゴルフファンを魅了するプレーヤーの登場〟を期待します。それまではゴルフ関係諸団体とさらに親密な交流を図り、ゴルフ界全体の底上げをJGJAが中心になってすべきだと思います。

我が国のプロスポーツ界は現在スター選手の海外流失で悩んでいます。この際、野球、サッカー界などの関係者とのシンポジウムなども考えたらいかがでしょうか? 何かいい打開策が見つかるかも知れません。
大山 郁夫(おおやま いくお)
1956年生まれ。廣済堂出版在籍中、ゴルフ雑誌編集業務に携わり、『月刊アサヒゴルフ』副編集長、『週刊アサヒゴルフ』副編集長、『最強のゴルフブック』編集長等を歴任し、99年3月同社を退職。同年4月にR・Aナビコーポレーションを設立し、主にゴルフ雑誌の編集、ゴルフ関連のプランニング業務に携わっている