日本ゴルフ界の未成熟部分と今後の対応策 こうすれば日本人男子選手もメジャーに勝てる!~管野 徳雄編~

「日本の男子選手は何故メジャーに勝てないのか!?」。これまであちらこちらで論議されてきたことであるが、その多くはプロゴルファー批判の色が濃いものであった。もちろん、当事者である選手の努力不足、研究不足は指摘されて当然ではあるが、いくら批判が繰り返されても、1900年代に日本人男子選手のメジャーチャンピオンは生まれなかった。おりしも、このところ若手選手を中心にアメリカツアーに挑戦したり、全英、全米オープンにトライするなど海外を目指すプレーヤーが増えている。そこでJGJA流に「何故日本の男子選手はメジャーに勝てないのか」││メジャーに勝つためにはどうすれば良いのかという建設的な意見をそれぞれの分野の論客にご執筆願った。

世界を真の目標にすればやるべきことはおのずと分かるはず
管野 徳雄
日本が世界に誇れる国際的なプレーヤーといえば男子では青木功ただ一人。国内では100勝以上を挙げ、50歳を過ぎた今でも圧倒的な強さを誇っている尾崎将司は国際舞台では名をあげることが出来ずに終わろうとしている。
ハワイアンオープンで青木が最終18番ホール(パー5)の第3打を直接カップに放り込んで劇的な優勝を遂げ、日本人が初めて米ツアーを制したのはもう16年も前のことだ。それより5年前、世界マッチプレーで世界の強豪を次々に倒して優勝した青木は1980年には全米オープンで帝王・ジャック・ニクラスとマッチプレーのような死闘を演じ、世界を沸かせた。
あれから20年になろうとしているのに青木の後継者は残念ながらまだ出てきていない。米ツアーのテスト(Qスクール)に合格してもシード権が取れずに1、2年で帰ってくる選手が多い。
米ツアーで1人シード権を守り続けている尾崎直道も43歳。欧州ツアーに出場している友利勝良(45歳)も今シーズン限りで撤退するという。
20代の若手選手はどうして世界に飛び出そうとしないのだろう。「チャンスがあったら是非行きたい」などという言葉が若いプレーヤーの口からよく出る。自分から出かけていってチャンスを掴もうとしないで、チャンスが来るのを待とうというわけ。
種を蒔いて収穫の時期が来るのをじっと待つのが農耕民族、獲物を探して野山を駆け回るのが狩猟民族といわれる。日本のプロゴルファーは狩猟民族にはなれないのだろうか。
日本で賞金王になったりしてメジャーの出場資格を取り、招待されたら出かけていって、それでシード権を取ろうとしている選手が若手の中には多いようだ。
その点、女子のほうがたくましい。国内で賞金女王にまでなった平瀬真由美などはアメリカへ渡ってからかなり苦戦しているようだが、頑張り続けている。小林浩美も最初の2、3年はなかなか勝てなかったのだから平瀬だって花が開くときは必ずや来る。
女子のほうは今年から福嶋晃子が加わり、メジャー制覇も夢ではないと思う。かつて樋口久子の活躍に刺激を受けて渡米した岡本綾子はアメリカの賞金女王にまで登りつめた。
男子だってやって出来ないことはないのだ。「力をつけて、やっていける自信がついたら行く」なんて言っていたら何時までたっても行けない。「当たって砕けろ」と今すぐ行くべきだ。
大学を出て2、3年の選手でも国内では年間数千万の賞金が稼げる。プロになったばかりでもすぐベンツに乗れて、1勝でもするとタレントのような扱いをしてくれる。それに気をよくしたらおしまいだ。年に1勝したぐらいで満足してはいけない。
どんな選手になりたいのか、志(こころざし)の問題だ。要はどこに目標を置くかだ。
「あまり遠くを見ないで、手の届くところに目標を設定し、1歩1歩登っていく」
そういう考えを持っている選手が多いようだ。なんという志の低さだろう。「日本一を目指したら、その手前で止まってしまう」と言った人がいる。
目標は高く掲げたほうがよい。「世界」に目標を設定すれば、そのためには今何をしなければならないかが分かってくる。ただ球数を打つだけではダンプで何台打っても世界的な選手には決してなれない。すぐれたコーチは絶対に欠かせない。筋力アップも必要になる。「世界」を目標にすれば、今やるべきことが次から次へと見えてくる。

〈プロフィール〉
管野徳雄(かんの・のりお)
1938年生まれ。立教大学卒。分かりやすい技術論と辛口の評論で知られる。著書に「トッププロのここを学べ」「即修ゴルフ上達塾」他多数。JGJA副会長。