オピニオンリーダーは語る ゴルファーとゴルフ場

日本のゴルフの発展を願うとするならば「今のゴルフ場のシステムは何かおかしい!!」との見地で、座談会を行ったのが今号の特集である。ここでは、スポーツマネジメントの専門家である間宮聰夫氏と日本パブリックゴルフ場事業協会の勝田武男氏に、主にゴルフ場を取り巻く問題に的を絞ってご意見をいただいた。

「スポーツとしてのゴルフ」
順天堂大学スポーツ健康科学部
スポーツマネジメント学科長 教授 間宮聰夫

確かに最近ゴルフ場の経営というのは右肩上がりであったものが下がってきたことは事実です。これはゴルフをプレーする人が減ってきたということです。それぞれ各ゴルフ場で計画している年間来場者数という中でゲスト(ビジター)が減っているからです。メンバーの来場者数というのは年間計画の中ではほぼクリアしていると思いますが、ゴルフ場はゲストの来場者を増やすために料金を下げているのが現実です。
料金を下げたら下げたなりの効果は出てはいますが、やはり、現実的にゴルフ場の経営としてはマイナスとなっています。また、企業の「交際費」というものが削られてきている現在、平日の来場者数が昔のようにとれないのも事実であります。では、来場者を増やすための適正料金はいくらかというと、私の考えではゲストがウィークデーにスポーツとしてプレーを楽しむならばクラブに払う料金と交通費などすべて込みにして2万円代が適正だと思います。このような料金設定で、ゴルフ場経営が成り立つのかと思われるかもしれません。また、ならば初めからその料金で設定していればということにもなると思いますが、これはゴルフ場サイドとしても努力をした上での設定料金と考えますし、近年ゴルフ場のリストラ化も進み、従業員数が減少しつつあるので、人件費がかからなくなり低い料金設定が可能となるのでしょう。「楽しむため」、「スポーツ」としてゴルフをするならば、この位が適正だと思われます。

最近「ゴルフをみんなのスポーツへ」と題してゴルフをもっと身近に、ゴルフを庶民的なスポーツにしようという傾向が高まってきていますが、私はこの運動をする前に一つみなさんに伝えたいことがあります。
「DOのスポーツ」という言葉があります。この「DOのスポーツ」とは、自分がやりたい! と思ったらできるスポーツの意味を持っております。サッカーが不得意な少年がうまくなりたい、選手になりたいと思ったならば、ボールを買って、公園や空き地でボールを蹴って遊ぶことから始めればいいのです。野球でも同じことがいえると思います。また、その遊んでいる風景を他の人が見ることによって興味がなかった人でも少しは興味が湧いてくるものです。しかし、ゴルフは違います。自分が直接やろうと思ったときにできないスポーツなのです。家庭的に恵まれている環境にあり、親がゴルフをしない限り子供が学ぶということは困難だと思われます。これでは「DOのスポーツ」とはいえません。誰でもできる、誰でも参加できるという環境を整えなければみんなのスポーツとならないのです。一番の問題であるのはスポーツ競技団体が自分たちのスポーツを国民全体のスポーツと理解していないところにあると思います。各スポーツ団体は日本代表の強い選手を養成するということに力を注いでいます。つまりそのスポーツを普及させようということが最近減少下降をたどっております。どちらかというと、普及ではなく強化育成がメインとなっていて、普及↓拡大という流れがほとんど欠落しているのが現状です。本来ならば強化↓育成の間にこの普及という文字を入れなくてはならないのですが、トップアスリートを育て、メダルを取ることばかりを考えている昨今。もちろん強力な選手が生まれることによってその人を目指そうという人たちが出てきますが、その数は少数。底辺の拡大にはつながらないのです。いわば、野球、サッカー、水泳、スキー、ほとんどのものがスクールを育て上げているのです。ゴルフはその中でも最たる場所に位置しています。ジュニアの育成となると必ずといっていいほどゴルフのできる人を集めています。先にも述べたようにゴルフのできる環境の子供達しか集まらないのです。今はゴルフのできない子供達を集めて真の楽しさを普及させないと「みんなのスポーツ」となっていかないと思われます。その環境を作り上げない限り、今後ゴルフの普及、ゴルフ場の来場者数も増加していかないでしょう。底辺の拡大を育て上げていけばゴルフ業界の不況も自ずとして立ち去ると思います。